2012年12月27日

妻木良三「幻標」@梅香堂

2013年最初の展覧会は、妻木良三君の「幻標」です。妻木君は画家として知られていますが、今回は初めての写真展となります。絵画とはまた違った、妻木君独自の感性が表れた約20点をご紹介いたします。ご期待下さい。


 

妻木良三「幻標」
TSUMAKI Ryozo -- "Phantom Sign"

2013年1月26(土)日〜3月3(日)日 13:00〜19:00
火・水曜日休堂 入堂無料
※オープニング・パーティ 1月26(土)日 17:00〜 無料
協力:レントゲンヴェルケ


鉛筆による緻密な絵画で知られる妻木良三の、初の写真展。2008年、僧侶として帰郷したころより、妻木は写真を撮り始めます。発表を目的とせず始めたそれらの写真は、日々の行や制作へ集中する彼の内面と表裏一体の、開かれた自然と日常への穏やかなまなざしを感じさせます。
和歌山などにおける五年間の写真を厳選し構成される本展は、作家としての妻木の新たな一面を示すものです。

妻木良三(つまき りょうぞう)

<http://ryozo3.blog104.fc2.com/>


1974年和歌山県生まれ。1999年より浄土真宗本願寺派僧侶。2001年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。おもな個展に、「ZONE」(Onomachi α・2011)、「境景」(ラディウム―レントゲンヴェルケ・2009)、「妻木良三展」(武蔵野美術大学gFAL・2008)など。おもなグループ展に、「人と自然の美術」(和歌山県立近代美術館・2012)、「手練〜巧術其之貳」(スパイラル・2011)、「掌10」(ラディウム―レントゲンヴェルケ・2011)、「DEEPDIGDUG PRESENTS PRISMA」(マキシミリアン・フォーラム、ミュンヘン・2011)、「線の迷宮IIー鉛筆と黒鉛の旋律」(目黒区美術館・2007)、「VOCA展2006―新しい平面の作家たち―」(上野の森美術館・2006)などがある。


 

 

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2012年12月26日

今年のベスト3

年末ですので、恒例の?今年のベスト3の展覧会を。

とくに忙しかったわけではないのですが、今年はあまり展覧会を見ていない気がします。それは、全体的におとなしめで、印象に残った展覧会が少なかったからかも知れません。やや無理矢理ながらも、ベスト3をあげてみます。

「近代洋画の開拓者 高橋由一」 京都国立近代美術館ほか

9/7〜10/21

今さらの感がある巨匠ですが、40歳を過ぎてより本格的に作画をはじめた彼の、途方もないエネルギーを実感させたよい展覧会でした。何より作品=絵画とは一つの「モノ」であること。日本と西洋との「モノ」の違いとは何かについて、あらためて考えさせられました。

「土屋公雄展 夢のあとに/交差する時間」 福井県立美術館

9/16〜10/21

こちらも、ちょっと忘れられた感のある土屋公雄の本格的な回顧展。すばらしく展示が「上手」な作家です。個人的にはあまりにも「上手」すぎてあまり好きではないのですが、大げさにいえば、美術と非─美術との境界をこれほど鮮明に見せてくれる作家も少ない。決して使いやすくはない展示空間を、見事に使い切る力量はさすが。願わくば、10年、いや20年前にこうした展覧会が開催されていれば・・・と思いました。しかし、今だからこそ可能となった、ともいえるでしょうか。

「キュレーターからのメッセージ2012 現代絵画のいま」 兵庫県立美術館

10/27〜12/24

作家も作品も、特筆すべきものはないのですが(失礼)、全体の構成が伸び伸びとしてよかった。それぞれの作家の個性がすっきり見えました。グループ展の場合、作家さんの「やる気」をうまく引き出し、お互いを輝かせることは、学芸員さんの腕の見せ所だと思います。日本有数の歴史と規模を誇る同館の「これから」を期待させる展覧会といえるでしょう。

何となくですが、今年は昨年の震災の社会への影響が、よりはっきりと出てきた印象があります。このどこか内向的な雰囲気は、おそらく来年にも続くのでしょうか。

posted by baikado at 15:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 博物館・美術館

2012年12月25日

前谷康太郎「distance」展終了

昨日をもちまして、前谷康太郎「distance」展は無事終了いたしました。

お忙しいところ、また寒い中、おいでいただきました多くのお客さんに、作家ともども、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

展覧会は大好評といえるものでした。繰り返しますが、前谷君のこの一年の成長は目覚しい。この春より大学院に進学し、制作に集中するようになったのも大きくプラスしています。

メインの作品である「further / nearer」は、シンプルで明快なコンセプトを、独創的かつていねいな撮影により作品化したものであり、「名作」としても差し支えない。

作家は歳を重ねればよりよい作品を生み出せるとは限らない。失敗を恐れずに、次の作品に向かい合ってほしいと思います。幸いなことに、彼の作品は「流行」的なものとはあまり関係がないので、自分なりの長期的なヴィジョンを持ち、じっくりと制作に取り組めることと思います。

前谷君、お疲れさまでした。

これで梅香堂の本年の展覧会は終了です。次回展まで一ヶ月ほど休堂とさせていただきます。この一年間、いろいろとお世話になりました。ありがとうございました。

posted by baikado at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 梅香堂

2012年12月21日

前谷康太郎展残すところ四日

師走ということもあり、何やら毎日バタバタしているうちに、11/17より始まった前谷展も残すところ12/24まで、四日間となりました。

いつもながらはあっという間です。しかも今回は通常の梅香堂の会期より一週間ほど短い。本来は年を越したかったのですが、前谷君は新春早々、下記のとおり應典院さんでの個展をひかえているため、クリスマスまでとなったものです。


前谷康太郎展示「स"सार samsaara(輪廻転生)」

日本各地の春分/夏至/秋分/冬至の日照時間の変化を、ゆっくりとした明滅として抽象化。通常共時的に「見る」ことのできない相対的な生のリズムを光によって隠喩し、墓地の見える應典院の2Fロビーに出現させる。

【展示】
○日 時 1月10日(木)〜1月24日(木)10:00~19:00
○場 所 應典院 2F気づきの広場
○参加費 無料

【トーク】
○日 時 1月11日(金)19:00〜20:00(トーク終了後1時間ほどオープニングレセプションを予定)
○場 所 2F気づきの広場
○参加費 無料
○モデレータ 
秋田光彦(應典院代表)
○ゲスト
前谷康太郎(ビデオアーティスト)
後々田寿徳(梅香堂主)
○申込み オンライン申込み
○定 員 40人


会期中、多くのお客さんにおいでいただき、とくに後半になって徐々に増えてきました。今週末もかなりの数のお客さんがいらっしゃいそうです。

また、近所の中学校の生徒さんなど、リピーターさんもちらほらおられます。

師走のお忙しいところ、ありがとうございます。

今週末は基本的に前谷君も在堂する予定です。

みなさまのご来堂をお待ちしております。

なお、此花メヂアのグループ展も12/24まで。こちらもぜひお見逃しなく。

posted by baikado at 10:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 梅香堂

2012年12月12日

宇佐美圭司先生を偲ぶ

10月19日に亡くなられた、宇佐美先生のことを思い起こしています。

そういえば、このブログをはじめた直後に、「宇佐美圭司論」を書き始めたのですが、そのままとなっています。

恩師というものは、いつまでたっても恩師ですが、先生の場合、絶対的な存在というより、「反面教師」的な部分も多かった(私の大学時代の先生はみなその傾向がありますが)。逆説的に、多くの、大切なことを学ばせていただきました。

大学に入ったころ、私は作家志望でした。絵描きになりたかった。先生のゼミに入ったのもそのためです。

しかし、謦咳に接するうちに、「私は作家にはなれない」と思い知りました。先生が優れた「作家」であるのならば、私はとても先生のようにはなれないと痛感したのです。

学芸員という卒業後の進路をご報告したとき、先生はどこかさみしそうでした。私に作家を目指してほしかったのでしょう。

数年前にひさしぶりにお会いし、夕食をご一緒したときにも、「今からでもいいから、作家になれ」とのお言葉をいただきました。

いずれにせよ、先生は私にとって、「作家」という存在の原体験でした。つまり、「絵描き」のカノンを打ち立てて下さった。

私が現代の「絵画」に手きびしいのは、先生の影響です。

先生、ありがとうございました。

安らかにお眠り下さい。

posted by baikado at 00:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 梅香堂