2013年06月28日

さようなら、此花メヂア

此花におけるアート活動の、中心的存在であったスペース、此花メヂアが、今月末日をもって閉鎖されるとのこと。

メヂアは、もともと2008年ころより立ち上がった「此花アーツファーム構想」の一拠点として、空き家であった古いメリヤス工場を改装して誕生しました。命名は作家の藤浩志さんで、その後は藤さんのアトリエ兼倉庫になっていました。

私が此花に来たのが2009年の春。梅香堂を改装中に何度かメヂアなどで藤さんにお会いしました。梅香堂がオープンした2009年冬前後に、何名かの作家による共同アトリエとなりました(このあたりの記憶はあいまいです。もっと後だったのかも)。

最盛期?には10名近い若いメンバーたちが利用していたと思います。メンバーや、メンバー企画の展覧会やイヴェントを年間数回開催してきました。

2009〜2010年ころのメヂアか。

2010年ころよりメヂアで生活するメンバーも出てきて、オープン性が増し、此花に訪れる多くの人たちが集まる場となりました。

反面、メヂアで本格的に制作するメンバーは減ってゆき、2012年ころより自由な溜まり場的存在となりました。

メヂアの魅力は、何といってもその異様な建築にあります。増改築を繰り返した五棟の建物が合体したそれは、九龍城とも軍艦アパートともつかぬ摩訶不思議なもので、雑然とした大阪の下町、梅香のシンボルともいえるものでした。

短い期間ですが、メヂアの思い出は尽きません。性格は異なりますが、梅香堂と兄弟的な存在であり、この場が失われるのはさみしい限りです。

もちろんメヂアにはいろんな問題もありました。しかし、それが生産的でクリエイティヴかどうかはさておき、広義のアートがひそやかに息づくためには、メヂアのようなある種治外法権的で、アナーキーな空間も必要です。

厳密な意味ではありませんが、メヂアは此花に集う若者たちの「アジール」でした。私もいろんな意味で癒されました。

二度とあのような場が生まれることはないでしょうが、その想い出だけは忘れないでいたいと思います。ありがとう。

6/30 17:00より、此花メヂアの最後のオープン・アトリエを行うそうです。メヂアを訪れたことがある方も、ない方も、お時間があればぜひどうぞ・・・。

https://www.facebook.com/events/399048563537735/

posted by baikado at 17:41| Comment(0) | 美術

2013年06月25日

ボン靖二「レシピ」@星画廊

先週土曜日、名古屋芸術大学さんの授業のあと、伏見地下街の星画廊さんへ。ボン靖二君の個展「レシピ」のオープニングです。

こちらは作家の渡辺英司さんが運営されているギャラリーです。通路側がガラス張りになっており、英司さんがおられる週末以外はそのガラス越しより作品を見るようになっています。四畳ほどのコンパクトなスペース。

今回、ボン君はテープを使ったインスタレーションを展示。なかなか難しい作品です。

スペースの中に入ってしまうと引きがなく、全体が見渡せない。だからといってディテールにさほど意味があるわけではないので、何とも作品の見え方が中途半端です。

スペースを出て、ガラス越しに全体を見渡すと、まとまりがあってボン君らしさが見える。

ボン君の作品は、インスタレーションなのですが、実は正面性というか、作品を見る方向が決められている気がします。もちろん絵画やレリーフとは異なりますが、いわば舞台や映画などのセットに近いかも知れません。

これは彼の個性の一つでもあり、また弱点かも知れません。このあたりをより意識して制作して行くことで、いい意味での分かりやすさが出てくるような気がします。お近くの方はぜひ。7/27まで。

英司さんたちと楽しくしばし歓談。名古屋の人たちとの交流も楽しい。英司さんはアーティスト・ブックがお好きで、自分でもこつこつ手作りで制作されています。実は、梅香堂で最近ささやかなカタログを制作しているのは、英司さんの影響もあるのです。

posted by baikado at 13:32| Comment(0) | 美術

2013年06月19日

吉原啓太「squash domain」@ギャラリー・パルクなど

大雨の中、ひさしぶりに京都へ。

まず、Gallery PARCさんの吉原君の個展、「squash domain」。本人からもいろいろ聞いていますし、制作過程も見ています。また展示を手伝ったみなからも話を聞いていたので、不思議な既視感が。

う〜ん・・・感想は直接本人に。6/23まで。

続いて京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAさんへ。一階では「絵画あるいは戦いの日々 関根勢之助 1929-2003」を開催中。あまり存じ上げませんが、すぐれた教育者でもあられたようです。

二階では、砥綿さん企画の「Sweet Revenge」が。京都市立芸術大学構想設計専攻出身の作家さん5名による展覧会です。

ぱっと見ると関連性のなさそうな作家や作品なのですが、周到に考えられた企画であることがわかります。ざっくりといえば、アートによるコミュニケーションがテーマなのでしょう。

作品がみな若々しく、そっけないように見える展示デザインも今風?です。7/15まで。

京都芸術センターさんの、「景 風 趣 情 −自在の手付き−」展へ。こちらは「伊藤存、小川智彦、ニシジマ・アツシの3人が対話を重ね、アーティスト自らが企画し開催するもの」だそうです。

作家企画らしい自由でのびやかな展示。いわゆる共同制作ではありませんが、三人が楽しくコラボレーションしている様子が伝わります。

とくにギャラリー北室は、三人の作品全体を一つのインスタレーションとして見ることができます。7/14まで。

余談ですが、京都芸術センターさんのホームページが全面リニューアルされています。以前のデザインはちょっと分かりづらかったので、よかった。

両展覧会とも、肩の力が抜けた、しかし小手先ではない、どこか余裕を感じさせる好企画でした。

そういえば、大阪にはこうした展覧会が可能な、中規模のギャラリーやスペースが少ないように思います。京都がうらやましい・・・。

posted by baikado at 22:52| Comment(0) | 美術

2013年06月17日

塚本亮太「TOUGH」展、オープン

一昨日、塚本亮太「TOUGH」展が無事オープンしました。お忙しいところ、また雨の中、オープニングにおいでいただきましたみなさまに、作家ともども御礼申し上げます。また、たくさんの差し入れもありがとうございました。

カタログにも書いたのですが、どんな時代の作品にも、必ずその時代の「空気感」のようなものがあります。それは純粋な様式のようなものもありますが、もっとわれわれの日常社会につながる空気もあります。

塚本君の作品は、今の時代、社会の空気をよくとらえています。あふれんばかりの物質や情報に取り囲まれながらも、われわれはどこか孤独です。その中で、埋没しそうな自らの生を必死で確かめること。それが塚本君にとっての制作という行為なのでしょう。

ある意味図式的なコンセプトの作品ですが、それを超えた社会的リアリティを感じさせるのは、そのひたむきさにあるのかも知れません。

これから暑くなりますが、ご近所のギャラリーthe three konohanaさんや、OTONARIFigyaなどなど、さまざまな展覧会やイヴェントも開催されています。ぜひ足をお運び下さい。

posted by baikado at 13:50| Comment(0) | 梅香堂

2013年06月14日

塚本亮太「TOUGH」展、明日オープン

諸事情により長く休堂していましたが、明日より塚本亮太「TOUGH」を開催します。

昨日、カタログも納品され、準備はほぼ終了しました。

準備期間が十分あったので、カタログには梅香堂での展示風景が掲載されています(吉原啓太君撮影)。

今回は塚本君の初個展です。彼はとくに発表を目的として制作してきたわけではないらしいのですが、三年間作りためてきた作品を発表したいと思い、昨年思い切って仕事を辞めて、本展に臨みました。いろんな人に作品を見てもらいたいそうです。

彼の作品はまだまだ荒削りなところがありますが、真性のポップアートがそなえているような、社会に対する一種の「毒気」があります。最近の若い作家としては、めずらしいのではないでしょうか。

明日、17:00より、ささやかなオープニング・パーティも催します(無料)。昨日今日と猛暑日の大阪ですが、お時間があればぜひ。

ご来堂をお待ちしております。

posted by baikado at 14:01| Comment(0) | 梅香堂