2013年11月29日

「ギャラリストのまなざし」@なんばパークス

「夏の大△」の大城真君が出品している「ギャラリストのまなざし」に早速行ってきました。

床に置いた大きなウーファー(低音用スピーカー)に紐を取り付け、天井まで紐を張り巡らせ、人間の耳には聴こえない低音を再生し、紐をゆらす作品。紐をストロボで照らすことによって、紐が波打って見えたりします。

小さなスピーカーが天井より吊るされており、それを三台のブラウン管テレビのホワイトノイズで囲み、照らしている作品。こちらもブラウン管のノイズ(走査線)の影響で、低音を発しているスピーカーの表面がゆらいで見えるらしい。

いずれも「夏の大△」や2010年のICCでの個展で発表された作品に通じるもので、簡単に言えば、聴こえない音を可視化した作品と言えるでしょう。

大城君は、いわゆる音楽畑の人ですが、こうしたサウンド・インスタレーションと呼びうる作品を作っています。

音楽畑の人のインスタレーションを、私のような美術畑の人間が見ると、素っ気なく見える場合が多い。ある種の実験装置のようなものを眺めている気になる。しかしそれは、私たちがあまりにも美術の「作法」に慣れ親しんでいるがためかも知れません。逆に音楽畑の人が美術作品を見ると、その作法に違和感を感じるかも知れない。

大城君の作品は、いわば音楽と美術の中間にあって、美術の作法の、さらにはその制度の奇妙さを浮かび上がらせている気がします。12/8まで。無休です。

posted by baikado at 17:35| Comment(0) | 美術

2013年11月28日

「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館 Attic Museum」@国立民族学博物館

先日、万博記念公園へ。民博さんの「渋沢敬三記念事業 屋根裏部屋の博物館 Attic Museum」展です。

渋沢敬三は、言わずと知れた渋沢栄一の孫。幼いころ生物学者になりたかったとははじめて知りました。本展は、敬三が私財を投じてコレクションした民俗資料、設立した民族学博物館や研究成果などを紹介するものです。

ダルマさんなど玩具からはじまったそのコレクションは、約28,000件におよび、国に寄贈され、民博さんに移管されました。本展ではその代表的な資料が展示されているのですが、興味深かったのは着物のコレクション。いわゆるきれいな晴れ着だけではなく、労働着など普段着が多くあり、戦前の資料として貴重だと感じました。

戦前までは、こうした民俗資料を博物館が対象とすることはほとんどなく、いわゆる美術品や歴史資料しかコレクションされていません。

たとえば大原孫三郎もそうですが、敬三のような戦前の資産家の多くは、慈善事業と言ってしまえばそれまでなのですが、文化活動に私財を投じることに使命感を持っていた。戦後、そうした流れが断ち切られたことにはさまざまな理由がありますが、いつもさみしく感じます。

ところで、今回も展示デザインはすばらしかったのですが、民博さんの特別展示館は設計が古いのか、予算をケチったのか、ぱっとしません。内装が安っぽく、空調機の風で「オシラサマ」の布が揺れていたり、床のトレンチがガタついていたり、気になるところが多い。本館に比べ大きく見劣りします。

日本を代表する博物館ですので、近い将来に刷新されることを期待します。

posted by baikado at 18:08| Comment(0) | 博物館・美術館

2013年11月17日

下道基行「torii」展オープン

昨日より、下道基行「torii」展が無事オープンしました。好天にも恵まれ、多くの方々にオープニングにおいでいただきました。下道君ともども御礼申し上げます。ありがとうございました。

今回展示している「torii」シリーズは、下道君の代表作であり、昨年の「光州ビエンナーレ」や「MOTアニュアル」などに展示されたものです。

梅香堂では、スペースの関係上、六点のみの展示ですが、十二分な見応えがあります。ホワイト・キューブの大きな展示室とは異なり、コンパクトな梅香堂で見ると、作品に囲まれているようで、より作品に集中でき、まさに写真の世界に沈潜していく気持ちになります。

とくに一階の展示はすばらしい。ちょっと大げさですが、感動的とさえいえるものです。

下道君の作品は、「こんなところにも鳥居が」という驚きのレヴェルをはるかに超えて、かつてそこに生きた人々の歴史、日本という国家の歩み、さらには「近代」の抱える運命的な何かにまで思いを馳せさせます。

見れば見るほど、いろんな思いをかきたて、見飽きることがない。もちろんプリントのクオリティも申し分ありません。

ぜひ、足をお運び、みなさまの眼でお確かめ下さい。

posted by baikado at 18:17| Comment(0) | 梅香堂

2013年11月14日

「再発見!大阪の至宝」@大阪市立美術館

先日、ちょっと時間ができたので、天王寺へ。大阪市立美術館さんの「再発見!大阪の至宝 コレクターたちが愛したたからもの」です。

大阪市美さんをはじめ、大阪市の博物館・美術館さんのコレクションの中核を占めるおもに個人コレクターさんたちが寄贈した作品や資料が展示されています。ほとんどがすでに見た名品ばかりでしたが、こうして「〜コレクション」とセクション別けされているのを見ると、それぞれのコレクターさんの個性が見えてくるようで興味深い。

会場で思ったのは、ここにある作品のほとんどは、いわゆる「展覧会」のようなかたちで、広く人の眼にふれることを考えて作られていないこと。当たり前ですが、日本の場合、作者が広く一般の眼を意識して作品を制作しはじめたのは、江戸期の大衆芸術を除けば明治以降です。

「展覧会」や「展示会」が支配的な発表のスタイルになったのは、戦後以降といってもよい。ほとんどの作家が「展覧会」を意識してはいなかった。彼らが意識したのは、いわゆるパトロンやコレクターであって、不特定多数ではない。

それが表現などに与えた影響は、いろんな先学が指摘していますが、私が今回直感的に思ったのは、「作品が恥ずかしそう」に見えたことです。ピカピカの展示ケースに収められ、四方八方からながめられている姿は、どこか所在無さげでした。

長い間、個人コレクションであった作品には、そうしたことを感じさせる「何か」があるのかも知れません。

とにかく、これだけの個人コレクションによって成立している公立美術館さんは、ほかの自治体には少ない。ぜひ足を運んでみて下さい。12/8まで。

posted by baikado at 17:33| Comment(0) | 博物館・美術館

2013年11月03日

御礼:梅香堂オープン四周年

本日、文化の日は梅香堂のオープン記念日です。ついに四周年を迎えることができました。
四年間においでいただきました、多くのお客さまに心より御礼申し上げます。

また、展覧会やイヴェントなどに参加いただいた作家や関係者のみなさん、多くの友人知人に、深く感謝申し上げます。
2009年の11月にオープンした時以来、「最低三年は続ける」ことを目標としてきましたが、おかげさまでそれは果たすことができました。

もちろん順風満帆というわけにはいかず、課題が山積している中での四年目の記念日ですが、素直に喜びたいと思います。

四周年記念展として、来たる11月16日より、下道基行君の「torii」を開催予定です。下道君の梅香堂での展覧会は、2009年の12月以来。どうぞご期待下さい。

最後に、物心両面で私を支え続けてくれた家族に、感謝の意を表させていただきます。ありがとうございました・・・。
posted by baikado at 17:53| Comment(0) | 梅香堂