2013年12月21日

今年のベスト3

年末ですので、頼まれてもいませんが恒例の今年のベスト3の展覧会を。

生来の出不精に加え、今年は家庭の事情などもあって、とくに展覧会を見に行くことが少なかったように思います。

そのため、関西に限っても重要な展覧会を見逃していることもあるかも知れません。あくまで管見かつ独断と偏見によるものです。また順番は会期順です。

1.「若狭・多田寺の名宝」@龍谷大学龍谷ミュージアム 2/9〜4/7

1987年に私が生まれて初めて本格的な展覧会を担当した際に、快く貴重な仏像を出品していただいた思い出のお寺です。そのご本尊、両脇侍揃っての展示は、まさに感無量でした。

現在は現代アートが中心の私ですが、いわゆる古美術のすばらしさ、大切さを知らしめてくれた仏像に再会できたのはありがたかった。

会期中に恩師、大先輩といえる若狭の永江秀雄さんがお亡くなりになったことも忘れがたい。

2.「古民家 山崎邸と9つの表現〜現代アート作家9人によるアート展〜」@山崎邸(粉河・和歌山) 3/3〜10

出品していた妻木君たちと一緒に行ったのですが、作品はもちろんその小旅行がとにかく楽しかった。私はあまりこうした企画は好きではないのですが、山崎邸の素朴なよさと、妻木君の幻想的な作品たちがマッチしていてすばらしかった。

妻木君が作品の前に結界として置く枝をどう配置するかで、一日中迷ったというエピソードもよかった。

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会場のスライドショーがYoutubeにありました。

3.「映画をめぐる美術―マルセル・ブロータースから始める」@京都国立近代美術館 9/7〜10/27

壮大な?テーマに果敢に挑戦した意欲的な企画展。作品の緩急にやや乏しい印象もありましたが、作家、作品ともよく考えられた展覧会。目新しさで話題になるような展覧会ではありませんが、昨今のギャラリーの展覧会の拡大版のようなものとは一線を画す、まじめな企画だと思いました。京近美さんは、時々こうしたマニアックな展覧会を開催されるので好きです。

来年春に、東京国立近代美術館さんへ巡回予定です。

※番外として、「のせでんアートライン 妙見の森 2013」における、梅田哲也君の作品をあげておきます。誰も見に来ない(失礼)ようなところに、力作を発表するところが梅田君らしい・・・。

posted by baikado at 16:49| Comment(0) | 美術

2013年12月02日

「音のすみか まほろば荘 ばきりノす 音の展覧会」@アートスペースジューソー

米子匡司君が参加している展覧会、「ばきりノす 音の展覧会」に。アートスペースジューソーさんは、天王寺駅近くの古いアパート、「新・福寿荘」内に今年できた新しいスペースです。

女性アカペラ・ユニット「ばきりノす」の音楽と、サウンド・エンジニアの西川文章さん、米子君のコラボレーションといえる展示。

暗い中、新・福寿荘に近づいて行くと、かすかな音楽が聴こえはじめ、さらに米子君の作品かららしい音が。入り口を開け、細い路地を通ると、足元の枯葉や、割れた瓦を踏みしめる音がそれに重なります。

建物に入ると、あちこちに設置されたスピーカーから「ばきりノす」の音楽が(16ヶ所らしい)。真っ暗な下の階に懐中電灯を持って下りると、点々と米子君の作品があります。

それらに電灯の光を当てると、作品が反応しさまざまな音や動きを発します。

新・福寿荘のレトロで不思議な空間の中を、音を探し歩き回るのは楽しい。音を含め、作品そして空間すべてが押し付けがましくなく、ひそやかで好感が持てました(子どもさんはちょっと怖がるかも・・・)。

12/16まで。入場料300円。夜がおすすめです。

場所がちょっとわかりづらい。天王寺駅を出て、あびこ筋を南下、大阪市立大付属病院の角を左折、病院前を過ぎて最初を右折し坂をやや下り、救急車入口の向こうの道を右折。50mほど進んだ突当りの小さな階段を降りた左です。二つ入口(玄関)がありますが、左手の木製のドアからどうぞ・・・。

posted by baikado at 22:59| Comment(0) | 美術

2013年11月29日

「ギャラリストのまなざし」@なんばパークス

「夏の大△」の大城真君が出品している「ギャラリストのまなざし」に早速行ってきました。

床に置いた大きなウーファー(低音用スピーカー)に紐を取り付け、天井まで紐を張り巡らせ、人間の耳には聴こえない低音を再生し、紐をゆらす作品。紐をストロボで照らすことによって、紐が波打って見えたりします。

小さなスピーカーが天井より吊るされており、それを三台のブラウン管テレビのホワイトノイズで囲み、照らしている作品。こちらもブラウン管のノイズ(走査線)の影響で、低音を発しているスピーカーの表面がゆらいで見えるらしい。

いずれも「夏の大△」や2010年のICCでの個展で発表された作品に通じるもので、簡単に言えば、聴こえない音を可視化した作品と言えるでしょう。

大城君は、いわゆる音楽畑の人ですが、こうしたサウンド・インスタレーションと呼びうる作品を作っています。

音楽畑の人のインスタレーションを、私のような美術畑の人間が見ると、素っ気なく見える場合が多い。ある種の実験装置のようなものを眺めている気になる。しかしそれは、私たちがあまりにも美術の「作法」に慣れ親しんでいるがためかも知れません。逆に音楽畑の人が美術作品を見ると、その作法に違和感を感じるかも知れない。

大城君の作品は、いわば音楽と美術の中間にあって、美術の作法の、さらにはその制度の奇妙さを浮かび上がらせている気がします。12/8まで。無休です。

posted by baikado at 17:35| Comment(0) | 美術

2013年10月22日

梅田哲也「山が入る穴」@のせでんアートライン

はじめて、妙見山に行ってきました。 能勢電鉄開業100周年記念「のせでんアートライン妙見の森2013」に、梅田哲也君が出品しているためです。

展示を手伝ったPOSの大川君よりちょっと話は聞いていましたが、作品は山頂近く、辺鄙な三角点のそばにありました。廃屋となった茶室を改造したものですが、なかなか大変な工事だったことがうかがえます。

場所が場所なだけに、作品には電気が使われていません。ネタばれになるので多くは語りませんが、二重の意味でまさしく「山が入る穴」です。

そして、梅田君がのせでんアートラインの中で最も不便なこの場所をなぜ選んだのか、伝わってきます。この作品はドカドカと多くの観客が押しかけるものではなく、せいぜい二、三名、しかも作品の鑑賞にはかなりの時間が必要だからです。まわりの幽かな松籟や、鳥や虫の声も大事でしょう。

都会の喧騒を離れ、霊山の山頂で瞑想できる・・・というとちょっと大げさですが、梅田君らしいサイト・スペシフィックな良作です。

山頂に登るためのケーブルカーとリフトの路線の途中にも梅田君の作品があるようです(ケーブルカー路線作品は未見)。電車で行くか、車ならケーブルカーの始発、黒川駅に駐車して登るとよいと思います。「アート&グルメパス(1,000円)」がおすすめか。

また山道だからだけではなく、梅田君の作品をよく見るためにも、晴れの日に行かれることを強くおすすめします(11/24まで)。

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2013年10月15日

「HANARART 2013:アイダカラダ」@大和郡山

台風が近づく中、大和郡山へ。「HANARART 2013」です。

「HANARART」は奈良県各地の町屋や倉など、伝統的な建築を使った地域型アート・イヴェントです。奥中章人君が企画する「アイダカラダ」が先週の土曜日より開催されており、梅香堂に出入りする作家さんたちも参加しているので、行ってきました。

会場は大和郡山市の堺町ゾーン(浅井邸酒蔵・浅井邸ガレージ・堺町の家)とされるところ。

まず、浅井邸ガレージの吉原啓太君の作品へ。吉原君はこの古いトタン張りのガレージの中に一ヶ月以上レジデンスしていたそう。そのレジデンス環境を整えるさまざまな行為を記録した映像が、上映されていました。

吉原君は、「箱」を制作し、その箱を移動(旅)させることによって発生する他者とのイヴェントを作品化してきたのですが、今回は、奥中君によれば「吉原君をガレージという箱に閉じ込めてみた」作品だそう。

確かに、窓や入口をふさがれたガレージは大きな箱をイメージさせます。そこに吉原君は自らの寝室(箱)を作りました。さらにミミズの家(水槽)などもあり、この作品はマトリョーシカのような入れ子構造を備えているといえるでしょう。

そうしてみれば、ガレージ内を動き回るロボット掃除機なども、箱のメタファーなのかも知れません。さらには・・・。

多くは語りませんが、今回の吉原君の作品は、すばらしい奥中君の企画があってこそ実現した佳作といえると思います。

その他、大歳さんや辺口君、水玉君ほかの浅井邸酒蔵・堺町の家の展示もよかった。何より企画した奥中君と参加した作家さんたちとの信頼関係がうかがえ、みな楽しんで展示を行ったことがひしひしと伝わってきました。

時間などの関係で他会場には行けませんでしたが、堺町ゾーンだけでも見応えはありました。お時間があればぜひ(10/20まで)。

posted by baikado at 21:46| Comment(0) | 美術