アートのトリセツ:取扱説明書 コレクション
毎日新聞 2013年05月08日 大阪夕刊
「このピカソは本物ですか?」。大阪府吹田市にあった国立国際美術館が04年、大阪市・中之島に移転して間もない頃、常設展でこう尋ねる来館者が相次いだという。「大阪の美術館がピカソ作品を持っているなんて」という驚きだろう。館の所蔵品=コレクションの存在が一般に知られていないことを端的に示している。
美術館の役割は主に、美術作品の収集、展示、保存、研究の四つ。作品との出会いの場を提供すると同時に、作品を集めて保存し、未来に伝える社会的な役割を担っている。
収集方法は、購入と寄贈に大別される。1980年代後半から90年代前半、国内の公立美術館は競うように、1億円を超える作品を購入していた。バブル崩壊後は一転、厳しい財政状況となり、「購入予算ゼロ」の施設がほとんどだ。それでも、所蔵家らの寄贈を受け入れ、コレクションの拡充に努めている。
各館の収集活動は、「日本美術院を中心とした近代日本画」「関西ゆかりの美術・工芸」など独自の方針に従って進められる。コレクションの数々は常設展で公開され、美術館の「顔」となっている。
そんな個性豊かな関西の6国公立美術館のコレクションに光を当てた展覧会「美の響演 関西コレクションズ」が、国立国際美術館で開かれている。同館のほか、大阪新美術館建設準備室▽滋賀県立近代美術館▽兵庫県立美術館▽和歌山県立近代美術館▽京都国立近代美術館−−の所蔵作品から約80点。国立国際美術館の安来(やすぎ)正博・主任研究員は「各美術館のコレクションは地域の財産。そのことを地元の人に再認識してもらえたら」と語る。
絵画や彫刻、写真など主に20世紀以降の欧米美術作品を、時代の流れに沿って展示する。ピカソ、カンディンスキー、ジャコメッティ、ウォーホルなど著名な作家がずらり。「展覧会名が示す通り、名品の共演が楽しめます」と安来さん。
作家、村上春樹の新著『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の表紙にも使われたモーリス・ルイスの作品が3館から出品される。別々の場所にあった同じ作家の作品を見比べられるのも見どころだ。
7月15日まで。一般1200円。国立国際美術館(06・6447・4680)。【清水有香】
先日も同展についてふれましたが、いわゆる「名品」中心なので、各館のコレクションの個性まで伺えるかといえば、ちょっと難しいかも知れません。
それよりも明らかなのは、1990年代以降の現代美術作品のコレクションが、ほとんど国際美さんのものであること。
これは同館のみが、購入予算を維持していることの結果に他なりません。
逆に言えば、他館さんの現代美術コレクションは、1990年代以降「止まっている」ことになります。
記事にもありますが、各美術館さんは、もっと積極的に寄贈を受け入れてもよいのではないでしょうか。とくに、直接作家さんから。
ただ、お役所というのは不思議なもので、「寄贈で何とかなるのなら、もう購入予算はいらないだろう」みたいな考え方をする場合もあります。「若手作家の作品はみな寄贈で」にもなりかねない。
また学芸員さんは「いらないお荷物(作品)まで付いてくる」?などの理由で、現役作家の寄贈に消極的な場合もある。
ところで、あまり知られていませんが、関西には「美術館にアートを送る会」という組織があります。
こちらは「美術館にアートを贈る会では、アートの好きな私たちが美術作品を選定し、その作品の所蔵者としてふさわしい美術館を見つけ皆で寄贈する、市民と美術館の新しい関係の構築を目指しています」という趣旨で設立されたもので、寄付金などにより運営されています。
過去三回、関西の美術館に作品を寄贈しており、現在は第四弾のプロジェクトが進行中だそう。
総じて欧米の美術館は、企業や個人の名コレクションの受け入れにしのぎを削っていますが、日本の美術館はまだまだ・・・という感はぬぐえません。
posted by baikado at 10:46|
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