先日、ひさしぶりに長時間電車に乗るため、実家にあった三島の『愛の渇き』の角川文庫本を手に取りました。ぱらぱらとめくってみて、「これはまだ読んでいないな」と思ったからです。
読み進めてみると、以前読んだことに気がつきました。それもおそらく何度も。私は三島が好きで、おもな作品は読んでいますが、これほど記憶に残っていない作品もめずらしい。私にとっては彼の凡作の一つか。
読後、発行年をみて少し驚きました。角川文庫版が1951年、初出は1950年ですから、三島はまだ25歳です。最初期の作といえます。晩年に近い作品かと思って読んでいました。
三島が何も変わらないということ、正確にいえばその「美学」の構造が変わらないことに驚いたのです。
ところで『愛の渇き』は大阪、豊中の米殿村が舞台となっています。米殿村は現在の豊中市旭丘地区らしく、阪急宝塚線岡町駅も登場します。
この作品の舞台として「米殿村」がでてきますが、現在の旭丘(旧熊野田村)のことで、三島の叔母家族が住む一万坪の農園と和風カントリーハウスがありました。昭和24年に三島は叔母の家にも宿泊し、この作品を執筆しました(豊中市立図書館ホームページより)。
本作冒頭の大阪・梅田周辺の描写は、半世紀以上たった今でも通用しそうです・・・一度、阪急宝塚線に乗って、岡町駅に行ってみたくなりました。