2010年12月24日

「記者ノート:’10年末ワイド/4 信頼低下した新潟市美術館=黒田阿紗子 /新潟」

記者ノート:’10年末ワイド/4 信頼低下した新潟市美術館=黒田阿紗子 /新潟

 

◇「市民主権都市」に恥じない再生を

先日、ふらりと新潟市美術館(中央区)を訪れた。新潟に赴任して5年、取材では何度も足を運んだが、プライベートでは初めて。「自画像」をテーマに地元出身から世界的な画家の作品まで約70点が展示されていた。観覧料はたったの200円。美術の世界に明るくない私でも、心を刺激されるような30分間を満喫できた。それだけに、ほかに客が1人もいなかったのがもったいない。

市美術館では、09年7月に館内の土製作品からかびが発生したのに続き、今年2月、展示品の電動カートからクモなどの虫が見つかった。4月から「奈良の古寺と仏像」新潟展の開催を控えていたが、同館の管理体制を問題視した文化庁は、奈良・中宮寺が所蔵する国宝や重要文化財の仏像を同館で展示することに難色を示した。篠田昭市長が文化庁を訪れ、計画通りの開催に理解を求めたが、会場は長岡市の県立近代美術館に変更せざるをえなかった。

篠田市長は、外部の専門家による市美術館評価改革委員会(委員長・金山喜昭法政大教授)を設置し、原因調査を依頼。改革委は8月に中間報告をまとめ、「かびやクモが発生するリスクを想定できず、リスクを軽減する努力を怠った」として、管理運営体制の甘さを指摘した。市は改革委と連携して「ピンチをチャンスに」(篠田市長)つなげるような対策を進めている。

ただ、一連の動きに市民の関心は今ひとつだ。11月には政令指定都市に移行後初の市長選が行われた。有権者に市美術館の話題を振ってみたが「仏像展が来なかったのはひどいよね」と、そこで認識が止まっていた。選挙は篠田氏が新人候補を退けて3選を果たしたが、投票率は過去2番目に低い31・04%。

市政への関心の低さを市政だけのせいにすることはできない。それでも、篠田市長がマニフェストに掲げた「市民主権都市」の実現には市政への関心向上が大前提になる。

市は現在、11年ぶりに美術館の学芸員の採用選考を行っている。年明けには館長を全国公募して、11年4月に再スタートを切る予定だ。篠田市長は、今年最後の定例会見で「(改革委で)いろんな病巣を摘出できた。しっかりと美術館の再生をしていく」と決意を述べた。市民を巻き込んだ再生の形に期待したい。=つづく(毎日新聞)

 

何度も書きましたが、「カビやクモ」が発生したことは事実として、それが館長の更迭や仏像展の中止(移転)などの大問題に広がったのはなぜなのか。

 

そこにはメディア(の対立?)を巻き込んだ、新潟市政に関連した有象無象の動きがあったはずです。

 

北川フラムさんもおそらくその被害者であられると思いますが、ご自身は痛くもかゆくもないかも知れません。「水と土の芸術祭2012」も開催されるみたいですね。また、市長さんの再選によって、新潟市美術館さんの改革は進んで行くのでしょう。

 

しかし、この騒動に巻き込まれた作家さんたちはどうなるのでしょう。そして他の美術館さんに過剰反応を起こさせ、現代アートの発表の場を狭める結果を招いた可能性も否定できません。

 

日本では(美術系)作家の立場はまだまだ弱いものです。「アート、アーティスト」ともてはやされて、行政や美術館などの社会システムに依存し、コマのように使われ、何かあったり、流行が過ぎれば使い捨て。文句を言えば干されてしまう。

 

いつも思うのですが、小額でも、しっかりお金を払ってくれる個人ファンに支えられている音楽家たちがうらやましい・・・ちょっと脱線しました。

posted by baikado at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 新潟市美術館問題

2010年09月10日

カビ・クモで国宝展示不許可、当時の副館長処分

カビ・クモで国宝展示不許可、当時の副館長処分

 

新潟市美術館で展示作品からカビやクモが発生し、今年4月に予定していた国宝の仏像展示が許可されなかった問題で、市は3日、カビ、クモ発生への対応が不十分だったとして、当時副館長だった文化観光・スポーツ部の50歳代男性職員を戒告の懲戒処分にした。

また、管理責任を問い、同部長と文化政策課長を訓告処分にした。さらに、責任の明確化として、市長を10%減給1か月、2人の副市長を給与の10%自主返納1か月とした。

篠田昭市長が3日の市議会全員協議会で報告。「市美術館が情報開示に後ろ向きな姿勢に気付き、内部改革を促してきたが、独立王国化した組織には難しかった。07年に北川氏を館長にしたが、改革手法に的確さを欠いたこともあり、今回の事態に至った」と述べた。

(2010年9月4日17時21分  読売新聞

 
市長選に出馬表明されたこともあり、このあたりをもって「総括」としておきたいようですね。
 
中間報告などを見るかぎり、当時の副館長さんはできることはやっていたように思いますが・・・。
 
新潟市美術館さんも今月から再オープンしたようですので、このまま何となくこの問題も忘れ去られて行くのでしょうか。
posted by baikado at 17:01| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年08月18日

カビ・クモ「体制に問題」

カビ・クモ「体制に問題」

2010年08月12日

 

展示作品にカビやクモが発生し、国宝展示ができなくなった新潟市美術館の運営改善策を検討してきた「市美術館の評価及び改革に関する委員会」(委員長=金山喜昭・法政大教授)は11日、検証結果をまとめた中間報告を篠田昭市長に提出した。事前準備が不十分なまま市長が美術館改革を目指した結果、管理体制に問題が生じ、「カビ・クモ問題」が発生したと指摘。収蔵作品の約4割がこれまでに展示されたことがない実態なども問題視し、今後は「全市民に開かれた美術館」を目指すよう求めた。(藤井裕介)

 

●「カビ・クモ問題」の原因は?

市美術館では昨年7月、「水と土の芸術祭」(昨年7月〜同12月)の展示品にカビが発生。今年2月には別の企画展の展示作品に約30匹のクモや虫が発生し、文化庁が国宝の展示を認めず、「奈良の古寺と仏像」展の会場が県立近代美術館(長岡市)に変更された。

 評価改革委はこの日の中間報告で、カビやクモが発生した作品について「『通常は持ち込まないタイプの作品をあえて持ち込む』という常識破りの企画自体に狙いがあった」と評価。ただ、当時の北川フラム館長や職員らが作品の乾燥や分解掃除などの対応策をとっておらず、「カビやクモの発生するリスクを想定できず、そのリスクを軽減する努力を怠ったことが問題」とした。

北川氏に対しては「美術館における文化財保存機能への配慮が不足していた」と、副館長ら職員に対しては「リスクへの感度の鈍さや意思疎通の問題があった」と指摘した。 

 

●北川フラム氏の館長就任など「開かれた美術館」への改革の評価は?

篠田市長は、情報公開など市美術館の改革を目指したが、「内部による改革は無理」と判断して2007年4月、「大地の芸術祭」(十日町市など)で実績を上げていたアートディレクターの北川氏を館長に起用した。

北川氏は「開かれた美術館」を目指して従来とは異なる企画展を開催。一部の美術館関係者や市民から、その手法に批判の声も上がった。

評価改革委は、北川氏がディレクターを務めた「水と土の芸術祭」について「旧来の市役所の文化行政の発想転換を象徴するものであり画期的」と評価。北川氏の館長就任以降、学芸員らが他の部署に異動となったことに疑問の声もあったが、「キャリア向上の観点から、専門分野を超えた広い視野を得ることを目的とした」ものと説明した。

しかし「カビ・クモ問題」で「美術館と市役所の管理体制の脆弱(ぜいじゃく)さが表面化した」とし、「新館長の投入や芸術祭による刺激だけで経営改革が進むものではない」「事前(改革に取り組む前)に、(市美術館の)これまでの実績と蓄積を十分に評価した上で課題を整理しておくべきだった」と指摘した。 

 

●他に問題は? 市はどうする?

評価改革委は、作品の収集や展示などの問題も指摘した。作品購入にはこれまで約30億円が投じられたが、収集方針は「近代の美術」「新潟の昨日・今日・明日」など。評価改革委は「総花的で独自の性格付けが希薄」と批判した。また、3千点以上の収蔵作品のうち44・2%が過去に一度も展示されておらず、「税金を使って購入した作品の価値を市民に存分に提供できていない」と指摘した。

また、同一人物が長年、購入作品の選定委員を務めていることなども問題視した。

篠田市長は11日、評価改革委から指摘があった問題について「おぼろげながらつかんでいたが、内部調査をせず北川館長を外部から送り込んでご迷惑をかけた」と話した。

市としても9月までに、これまでの館長や副館長ら「責任者」への聞き取り調査を実施し、市長を含めた処分や、今後の美術館の運営の方向性などを明らかにするという。(朝日新聞

 

長文ですが、今ひとつ要領を得ない記事ですね。

 

新潟市美術館の評価及び改革に関する委員会中間報告書」も公開されています。こちらも長文ですが、興味のある方はぜひ。

 

以前より何度も述べてきましたが、この問題は、新潟市美術館さんの旧勢力と、北川さん(市長も含む?)たち新勢力との、政争の具あるいはスケープ・ゴートとして、鈴木勲さんと久住有生さんの作品が槍玉に挙げられたものと思われます。

 

上記中間報告書の冒頭に:

 

・実地調査、ヒアリング、データ分析をした結果、初期の段階で次の3つの大きな発見があった

@カビ、クモは作品と共に外から館内に持ち込まれたことが明らかである。一時的な問題でしかなく、再発のリスクは低い。

A美術館のバックヤードは公の施設としてはあまりに管理が不備である(4月27日時点ではゴミや不用品が集積・散乱〔資料−3〕)。しかも施設の老朽化が進行している。

B市役所が管理する公の施設としては経営・運営面で数多くの課題がある。

例えば、書類や手続きなどの管理の基本が長年に渡って不備である上、ヒアリングからも組織の機能不全(本庁と館の関係を含む)の様子が窺えた。即ち、市役所の一部門としての基本的な管理が出来ていない。

 

とあるとおり、そもそも同美術館の政治的な問題も含めた管理・運営体制に問題があったと見るべきでしょう。

同報告書の後半の「市役所が管理する公の施設としての美術館の現状評価」は、何だか歯切れの悪い表現になっていますが、要するに新潟市美術館さんは、全国的に見てあまりぱっとしない美術館であり、政令指定都市レヴェルの公立美術館としては評価できない、ということです。

 

同委員会さんは市長が招集したものであり、その点をある程度差し引いて考えても、この報告書の内容は妥当、いや穏当と言えると思います。

 

私は、本報告書を含めてメディアなどの問題は、スケープ・ゴートにされた作家・作品への配慮がほとんど見られないことだと考えます。まるで彼らの作品によって、「仏像展」が美術館で開けなくなった、と言わんばかりですが、「一時的な問題でしかなく、再発のリスクは低い」ことを、北川さんらへの個人攻撃のためか、メディアなどが夜郎自大的に大げさに騒ぎ立てた結果ではないのでしょうか。

 

そして最終的に一番バカを見たのは「新潟市民」であると思います。

 

繰り返しますが、閉鎖的と言われるお役所の中でも、美術館などはとりわけ特殊な組織なのです。専門知識のない市民やメディアがそれをチェックするのはなかなか難しい。

本来なら、「業界」がお互いに批評など健全なガバナンスを機能させねばならないのですが、この国にはそれも少ない。

「今後は<全市民に開かれた美術館>を目指す」というのは口当たりのよいかけ声ですが、私には単純に当事者たちのモラルとディシプリンの問題だと思います。

 

posted by baikado at 13:58| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年07月26日

新潟市美術館の評価及び改革に関する委員会ヒアリング

新潟市美術館の評価及び改革に関する委員会ヒアリング

 

日時:平成22年7月27日(火) 午前10時30分〜

会場:東京

非公開

 

新潟市美術館の「カビ・クモ発生問題」で、当事者のアーティストが発言する(おそらく)初めての機会になります。

少なくとも私は、今回の騒動でメディア(テレビ、新聞等)の取材はこれまで1件も受けていません。

とても重要なヒアリングです。

 

鈴木勳さんのブログよりの転載です。

 

鈴木さん、頑張って下さいね・・・。

posted by baikado at 22:56| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年07月07日

嘔吐・・・

先述の「会議開催状況」をざっとながめてみました・・・。

 

この会議で語られていることが真実(に近いもの)であり、議事録や資料から読み取った私の憶測が正しければ、新潟市美術館さんで過去行なわれてきた活動(のいくつか)は、「犯罪」といわざるを得ません。

 

とくに新潟市民のみなさんは、めんどうでもこれらの記録に目を通すべきです。

その上で各自判断していただきたい。

 

美術(館)には、こうした側面もあることを。

posted by baikado at 21:24| Comment(0) | 新潟市美術館問題