記者ノート:’10年末ワイド/4 信頼低下した新潟市美術館=黒田阿紗子 /新潟
◇「市民主権都市」に恥じない再生を
先日、ふらりと新潟市美術館(中央区)を訪れた。新潟に赴任して5年、取材では何度も足を運んだが、プライベートでは初めて。「自画像」をテーマに地元出身から世界的な画家の作品まで約70点が展示されていた。観覧料はたったの200円。美術の世界に明るくない私でも、心を刺激されるような30分間を満喫できた。それだけに、ほかに客が1人もいなかったのがもったいない。
市美術館では、09年7月に館内の土製作品からかびが発生したのに続き、今年2月、展示品の電動カートからクモなどの虫が見つかった。4月から「奈良の古寺と仏像」新潟展の開催を控えていたが、同館の管理体制を問題視した文化庁は、奈良・中宮寺が所蔵する国宝や重要文化財の仏像を同館で展示することに難色を示した。篠田昭市長が文化庁を訪れ、計画通りの開催に理解を求めたが、会場は長岡市の県立近代美術館に変更せざるをえなかった。
篠田市長は、外部の専門家による市美術館評価改革委員会(委員長・金山喜昭法政大教授)を設置し、原因調査を依頼。改革委は8月に中間報告をまとめ、「かびやクモが発生するリスクを想定できず、リスクを軽減する努力を怠った」として、管理運営体制の甘さを指摘した。市は改革委と連携して「ピンチをチャンスに」(篠田市長)つなげるような対策を進めている。
ただ、一連の動きに市民の関心は今ひとつだ。11月には政令指定都市に移行後初の市長選が行われた。有権者に市美術館の話題を振ってみたが「仏像展が来なかったのはひどいよね」と、そこで認識が止まっていた。選挙は篠田氏が新人候補を退けて3選を果たしたが、投票率は過去2番目に低い31・04%。
市政への関心の低さを市政だけのせいにすることはできない。それでも、篠田市長がマニフェストに掲げた「市民主権都市」の実現には市政への関心向上が大前提になる。
市は現在、11年ぶりに美術館の学芸員の採用選考を行っている。年明けには館長を全国公募して、11年4月に再スタートを切る予定だ。篠田市長は、今年最後の定例会見で「(改革委で)いろんな病巣を摘出できた。しっかりと美術館の再生をしていく」と決意を述べた。市民を巻き込んだ再生の形に期待したい。=つづく(毎日新聞)
何度も書きましたが、「カビやクモ」が発生したことは事実として、それが館長の更迭や仏像展の中止(移転)などの大問題に広がったのはなぜなのか。
そこにはメディア(の対立?)を巻き込んだ、新潟市政に関連した有象無象の動きがあったはずです。
北川フラムさんもおそらくその被害者であられると思いますが、ご自身は痛くもかゆくもないかも知れません。「水と土の芸術祭2012」も開催されるみたいですね。また、市長さんの再選によって、新潟市美術館さんの改革は進んで行くのでしょう。
しかし、この騒動に巻き込まれた作家さんたちはどうなるのでしょう。そして他の美術館さんに過剰反応を起こさせ、現代アートの発表の場を狭める結果を招いた可能性も否定できません。
日本では(美術系)作家の立場はまだまだ弱いものです。「アート、アーティスト」ともてはやされて、行政や美術館などの社会システムに依存し、コマのように使われ、何かあったり、流行が過ぎれば使い捨て。文句を言えば干されてしまう。
いつも思うのですが、小額でも、しっかりお金を払ってくれる個人ファンに支えられている音楽家たちがうらやましい・・・ちょっと脱線しました。