2010年05月20日

「市長の館長兼任やめて」美術館問題で署名手渡す

「市長の館長兼任やめて」美術館問題で署名手渡す

 

展示作品からカビやクモが発生し、文化庁から国宝の仏像展示を止められるなど、新潟市美術館をめぐる一連の問題で、二つの市民団体が19日、現在館長を兼任する篠田昭市長に対し、兼任をやめることなどを求める署名を手渡した。

署名を提出したのは、同美術館のボランティアらでつくる「新潟市美術館を愛する市民の会」(内田洵子代表)と、初代館長を中心とした美術関係者の団体「新潟市美術館を考える会」(林紀一郎代表)。署名は2団体が、4月上旬〜5月上旬に集めた6258人分(うち市内4234人)。

篠田市長は、一連の問題で前館長の北川フラム氏を3月に更迭した後、自身を館長兼任としていた。

要望は、〈1〉篠田市長は館長兼任をやめる〈2〉休館し、作品の点検と施設の消毒をする〈3〉美術館の所管を市教委に戻す――など。

内田代表は「市美術館は市民参加でできた経緯がある。小さいながらもピカッと光るものにしてほしい」と訴えた。また、市が設置した「市美術館の評価及び改革に関する委員会」で予定される元学芸員の聞き取り調査を、公開で行うよう要求した。

篠田市長は「今回の要望と、問題の原因が合っているか、チェックしないといけない。相当合わない部分があると思う」とした。(2010年5月20日  読売新聞

 

どんどん問題が美術館そのものから乖離していくというか、本音が露呈してくるというのか・・・。

 

小さな自治体で、美術館などが政争の具とされるのはよくあることなのですが、日本海側唯一の政令指定都市の新潟市で・・・。

 

内田洵子さんは元新潟市議会副議長、林紀一郎さんは元同館館長さんだそうですね。

posted by baikado at 18:13| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年05月15日

「前任の館長がいつも美術館にいてガバナンスが混沌(こんとん)としていた」・・・?

例の新潟市美術館さん問題です。
 
新潟市美術館:カビ・クモ発生問題 北川氏、管理責任認める−−改革検討委 /新潟
 
◇「認識甘かった」
新潟市美術館の展示作品からかびやクモが見つかった問題で、同市の評価改革検討委員会の第2回会合が13日、市役所であり、当時館長だった北川フラム氏から聞き取りが行われた。北川氏は「クモ・かびにつながる管理について認識が甘かった。問題が起こった時にどう動くのか、ちゃんとしたガバナンス(企業統治)が敷けなかった」と述べ、自らの管理責任を認めた。
北川氏は07年4月、館長に就任。当初から学芸員と事務職員との間に溝があり「僕が会議で『こういうことをやりたい』と言っても(学芸員から)反応がなく、ディスカッションができなかった」と訴えた。
委員会終了後、北川氏は報道陣に対し「上司が言っても動かないという美術館以前の問題がクモ・かびにつながり、結果として仏像展が(市美術館で)開けなくなった」と話した。
また、この日の委員会では、美術館の事務室や実習室が散らかり不衛生な状態にある様子が写真で示された。委員からは「再生のために一度休館すべきだ」との意見が出た。
6月2日に中間の緊急提言をまとめて篠田昭市長に提出し、7月に3回目の会合を開く。【黒田阿紗子】(毎日新聞
 
「ガバナンス問題あった」北川前館長
2010年05月14日
 
新潟市美術館の運営や管理の問題点を検証する「市美術館の評価及び改革に関する委員会」(委員長、金山喜昭・法政大教授)は13日、同市役所で会合を開き、北川フラム前館長から館長時代の運営について聴取した。北川前館長は、学芸員が企画展の打ち合わせを欠席するなど「ガバナンス(統治)に問題があった」と振り返った。当時の学芸員の聴取は、7月に予定される次回会合で行われる。(藤井裕介)
北川前館長は2007年に館長に就任。当時は「前任の館長がいつも美術館にいてガバナンスが混沌(こんとん)としていた」という。その後も「企画展の会議をしても学芸員は出ないことが多く、ディスカッションできない状態だった」。学芸員を異動させたことについては「会議に出てこないのだから、しょうがない」と話した。
展示品からカビやクモが発生したことについては「甘かった。責任は大きいと思う」とし、「奈良の古寺と仏像展」が開催できなかったことは「残念。クモやカビだけでなく、いろんな路線の問題(考え方の違い)が出る美術館では難しいということだろう」との考えを示した。
委員からは「展示場に外気が入る開口部があまりに多いし、強盗が来たら物を取りやすい場所」「あんなに汚い公共施設は見たことがない。営業停止にしてやり直した方がいい」などの厳しい意見が相次いだ。

市美術館では昨年7月と今年2月に展示品からカビやクモが発生し、管理態勢が問題視され、国宝などを展示する「奈良の古寺と仏像展」が開催できなくなった。市は同館の管理態勢などを検証するため、ほかの美術館の学芸員らによる同委を先月設置し、改善策を提言してもらうことにした。(朝日新聞) 

 

この二つの記事の微妙なニュアンスの違いはなんでしょう。

 

毎日新聞さんの記事では、「北川さんのガバナンスに問題があった」と読み取れますし、朝日新聞さんでは「もともと美術館のガバナンスに問題があった」と読めます。

 

「北川前館長は2007年に館長に就任。当時は<前任の館長がいつも美術館にいてガバナンスが混沌(こんとん)としていた>という」というのは驚きですが、何となく地方(田舎)の美術館にありがちな状況のような気もします(失礼)。

 

美術館が不衛生である、という意見はいったいどのくらいのレヴェルを指摘しているのかよく分かりません。長く業界で働いて来て、美術館が「衛生的である」と思ったことは一度もありませんが、おそらく一般的に見て「整理整頓が行き届かず、不潔である」といったところなのでしょうか。

 

近年の博物館・美術館さんではIPMによる展示・保存環境管理が主流になってきています。

IPMとは、Integrated Pest Managementの略です。何だか難しそうな感じがしますが、その要点をすごく簡略に言えば、「いつもお掃除をしましょう」です。

殺虫殺菌ガスや薬剤などに頼らないで、環境を日常レヴェルで清潔にすることで、虫菌害などを防止するのです。

 

今回の事件とは直接的には結びつきませんが、カビや虫の発生する可能性のある作品がどうのこうの言う前より、美術館全体の管理に問題があった可能性もありますね・・・。

posted by baikado at 14:35| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年05月08日

新潟市美術館問題(こだわります)

記者ノート:問題の根源見直しを=黒田阿紗子 /新潟

 

自分が快く思わない人からの忠告は、なかなか素直に聞き入れられないものだ。昨年7月、新潟市美術館の展示作品から、かびが見つかった時の篠田昭市長もそうだったのではないか。

かびの問題をいち早く指摘したのは、当時の北川フラム館長に批判的な市民らだ。記事にする時、篠田市長に見解を尋ねると「管理面で反省すべき点もあった」としながらも、最後は「北川フラムに反対する方はいろいろおっしゃるから」と不満そうな表情を見せた。

市長の肝いりで館長になった北川氏は、伝統にとらわれない運営手法で、08年の入館者数を例年の2倍以上の約20万人に押し上げた実績もある。だが、みんなの財産である美術作品に悪影響を及ぼしかねない「かび」の代償は大きい。その後、クモや虫まで発生したのは、市長を含めた同館職員が、事の重大さを見誤った結果でもある。

そうして市美術館での開催を断念せざるを得なくなった「奈良の古寺と仏像」新潟展が、会場を変えて長岡市の県立近代美術館で始まった。これはこれで最善を尽くすだけでなく、今度こそ問題の根源を見つめ直し、その場しのぎでない対応を見せてほしい。

毎日新聞 2010年4月27日 地方版

 

毎日新聞さん、執拗ですねえ・・・。新潟の地方政治のことはまったく知りませんが、市長さんに対する敵意のようなものを感じます。

 

以前ふれた鈴木勳さんのブログに、毎日新聞さんへのメールが掲載されています。その中の;

 

 

事件報道以来、これまで作者の私には1件の取材もなく、私の意見を述べる機会がありませんでした。

そこで自分からこの問題を取り上げることにしました。

アーティストとして自分の作品を守るためです。

自分の作品を守れるのは、自分しかいないからです。

 

・・・中略・・・

 

一連の報道を見ると、私の「作品」が、「素材」として扱われていることに対し、作者として懸念し、意見申し上げた次第です。

 

という意見はまったくもって同感です。しかしながら、「自分の作品を守れるのは、自分しかいない」というのは、あまりにもさみしい。

更迭された北川さんにそれを求めるのは無理かもしれませんが、この展覧会の関係者の方などより声があがってもいいのではないでしょうか。

 

先日会ったT君ともこの話題になったのですが、昨年の文化庁メディア芸術祭のアート部門大賞作品、「growth modeling device」が、「作品に生もの(タマネギ)が使われている」という理由で、国立新美術館さんでは実物を展示できず、妙な映像展示となったそうです。

 

タマネギがなぜダメなのか、ちょっとよく分かりませんが、あちこちの博物館・美術館では館内に花や観葉植物があったり、貸し展示室などで活け花や盆栽の展示などもよく見かけます。

 

展示や保存環境を重視して、「生もの」などを突き詰めれば、「有機物」すなわちほとんどの作品や「人間」すら展示室から排除すべきなのは、高松塚古墳の例で明らかです。

 

保存と、展示活用が相反する行為であることは、一般の方でもちょっと考えればすぐに理解されると思います。その相反する行為の着地点を、動的に決定していくことが、博物館・美術館、そしてその専門家たちの義務なのです。

 

作家や作品にその責を負わせるのは誤りです。

 

posted by baikado at 17:39| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年04月25日

「市美術館改革委員会を設置 新潟 」雑感

市美術館改革委員会を設置 新潟

2010.4.22 21:01

 

美術品の管理態勢が問題視され、文化庁が国宝展示を認めなかった新潟市美術館の改革を目指し、新潟市は22日、法政大学キャリアデザイン学部の金山喜昭教授を委員長とする「市美術館の評価及び改革に関する委員会」を設置すると発表した。

委員会は東京都美術館や大原美術館(岡山県倉敷市)の学芸員、大学教授ら6人で構成。27日に第1回会合を開き、5月末をめどに緊急総括をまとめて6月議会に報告する。

篠田昭市長は22日の記者会見で「組織としての問題点をあぶり出し、本格リニューアルに向けて未来志向の議論をしていただく」と狙いを語った(msn産経ニュース)。

 

う〜ん・・・メチャクチャうさんくさいですねえ・・・。

いつも思うのですが、こうした行政の「〜委員会」に参加する方々って、どのようなお考えで参加されているのでしょう。

 

金山先生は博物館学がご専門ですが、もともとは考古学ご出身の方。また、おそらくこの委員の中には「新潟市美術館に行ったこともない」方もいっらしゃるのではないかと憶測します。さらに来月末までに総括して議会に報告というスケジュールを見ても、この委員会が議会対策などの名目だけのものであることは明らかではないでしょうか。

 

ところで偶然、今回の新潟市美術館さん問題の一端となった作品「新潟ー水の旅」の作家、鈴木勳さんのブログを見つけました。

4月14日付けの毎日新聞社さんの記事「記者の目:新潟市美術館の“かび”騒動」に対しての鈴木さんの公開質問と、その回答が載せられています。

 

「記者の目〜」は、学芸員資格を有するという立上修記者による、新潟市美術館さんの「美術館本来の使命からの逸脱(同記事)」を憂うという一見至極まっとうな意見に見えます。

 

しかしながら、これをまっとうな意見だと思うのは、博物館・美術館業界関係者「以外」の方々のみです。

 

以前も指摘しましたが;

「北川館長体制の抱える問題は、企画展示室内でのかび発生という形で09年7月に明るみに出た。関係者によると、その後も、館内の清浄度を示す浮遊菌の数値が安定しないうちに、最も厳しい管理が求められる収蔵庫から、所蔵作品の出し入れや他の美術館への貸し出しが薫蒸をせずに行われていた。10年2月には、薫蒸せずに持ち込んだ展示作品からクモや甲虫類が計34匹も確認された(同記事)」

という指摘に、「言語道断だ! けしからん!!」と叫べる業界関係者は、この国にまずいないと断言できます。指摘は正論ですが、現実にそのような完璧な管理を実現している館はほとんどありません。

 

鈴木さんの質問に対する立上記者の回答の;

「>新潟市美術館以外の美術館、博物館においてもカビや虫の発生例があると思い

>ますが、他での発生ケースについて全く触れられないのはなぜでしょうか?

 

確かに他の美術館、博物館でもかびや虫の発生例はあります。

一連の記事は、新潟市美術館の問題を取り上げているものです。

また、人為的な発生であるところを指摘したつもりです[鈴木さんのブログより]。」

 

「人為的」とはどういう意味なのでしょうか。「故意にカビや虫を発生させた」ということなのか、「不注意でカビや虫を発生させた」ということか。後者であれば、「他の美術館、博物館でもかびや虫の発生例」にも当てはまります。

 

今回の新潟市美術館の問題は、前美術館長さんによる運営全般への不満を、資料の保存・管理という問題にすり替えて追求したものでしょう。正面きっての攻撃が難しいと判断したため、足元をすくったともいえます。

 

くりかえしますが、そのために鈴木さんのような作家や作品が、スケープゴートにされてしまったことこそが、今回の最大の問題ではないでしょうか。

「作品保存・研究の原点に返れ(同記事)」と叫ぶのであれば、鈴木さんの作品も、国宝の仏像も、美術館にとってはまったく等価な資料であるべきと指摘すべきなのです。

 

また、同記事にある;

「文化庁の担当者はこう警鐘を鳴らす。<指定管理者制度などで、美術館や博物館を巡る環境は変わってきている。市長や知事の肝いりで名物文化人が館長になり、伝統や蓄積を切って目新しいことをするのは、構図としてはあり得るが、うまくいった例はあるのか。新潟市美で起きたことから学ぶことは多い>」

は、まったくもって噴飯ものです。

 

指定管理者制度云々を持ち出したのは、あなた方ではなかったのでしょうか。

たとえば「市長や知事の肝いりで名物文化人が館長になり、伝統や蓄積を切って目新しいことをする」金沢21世紀美術館さんなどについては、どういうコメントをされるのか、「新潟市美で起きたことから学ぶこと」とは具体的に何か、後学のため、ぜひお聞きしたいものです。

 

 

posted by baikado at 13:42| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年03月22日

「美術館は誰のものかしら」

ニッポン密着:新潟市美術館 独断運営でほころび 生え抜き学芸員放出

 

かびやクモなどが展示室内で発生した新潟市美術館(同市中央区)は、今春予定していた中宮寺や法隆寺などが所蔵する国宝、重要文化財を展示する「奈良の古寺と仏像」の会場とすることを断念した。美術関係者が疑問視する「管理レベルの低下」の一因は、市美術館を巡る独断的な運営と人事とみる市民も少なくない。国内外から信頼を失った市美術館で何が起きていたのか。

<ここ3、4年の一連の人事は異常である。開館25年目になるが、これまで学芸員を中心に、寝食も忘れて培ってきた館の品格と伝統を思うと、なんとも空(むな)しさを感じる>

市美術館を支援する市民らでつくる市美術館協力会の会報「ななかまど」(09年5月号)。紙面には、協力会世話人代表が寄せた辛らつな市美術館批判が載っていた。

一連の人事とは、北川フラム前館長(12日付で更迭)の就任した07年4月から2年間に、4人いたうち、生え抜きのベテラン学芸員3人が異動させられたことだ。現在、谷哲夫氏は西蒲区役所地域課、神田直子氏は職員健康管理課、木村一貫氏は市歴史博物館(出向)でそれぞれ働いている。

アートディレクターとして知られる北川氏の招へいは、現代美術などを駆使したイベントによる地域活性化の手腕を評価した篠田昭市長の肝いりだった。北川氏は就任後、「外に開かれた美術館」を目指して、「水と土の芸術祭」など美術の枠を広げる企画・展示に着手した。

一方、3人の学芸員には、作家や他の美術館と築いてきた信頼関係、自主企画展が国内外の美術関係者からも高い評価を得たという誇りがあった。定年が近い谷氏は仏像も扱える彫刻の専門家。常設展示室にあった3人が作った解説パネルは、3人目が異動した日に撤去されたままだ。

「まさか全員を異動させるとは。作品の保存と研究という美術館の使命、存在意義を忘れている。(市長は)美術館を完全に壊すつもりか」。追われた一人は不信感をあらわにした。

これに対し、篠田市長は反論する。「専門分野に限らず他の職場で行政事務を経験することで、職員の視野が広がり、さらに活躍の度合いが高まる」(新潟市美術館を考える会の質問状に)。北川氏も「どの美術館も事務職は2、3年で代わるのに学芸員は10年、20年の永久就職だから学芸員の王国になる。これまでの館長は名誉職で何も言わなかったが、篠田さんが強力な人間(私)を送り込んだ」と強調した。

    □

建築家、前川國男氏が設計した市美術館は85年10月「市民の美術館」として開館した。78年夏、市立高校美術教諭だった市橋哲夫さん(75)は当時、美術館建設を切望する市民の声や運動の高まりに胸を躍らせた。「美術館建設に役立ててほしい」と、地元百貨店で開かれた地元画家らの作品展示即売会に、自らの作品を提供した。

市美術協会は、こうした市民の声の受け皿となった。会長は美術館の運営方針を決める協議会委員として名を連ね、企画展の開場式には来賓として招かれるのが慣例になった。ところが、それも北川氏の就任後は事情が変わる。

08年9月2日、企画展「浦潮(うらじお)とよばれた街」の開場式。伊藤栄一・市美術協会長(77)は来賓としてテープカットする心づもりだった。しかしリボンや席は用意されておらず、一般招待客扱い。「なめられたかな」。式典終了後、北川氏と名刺を交換したが、抗議の言葉はのみ込んだ。

    □

北川館長体制のほころびは、09年夏、展示室でのかび発生という前代未聞の形で露呈する。版画家でコレクターとしても知られる木村希八さん(76)は、それを予感していた。信頼していた学芸員たちの異動を知り、その約3カ月前、寄託していた海外作家のコレクション52点を引き取った。「預けた作品がどうなるか不安だった。新しい学芸員とは引き継ぎをしなかった」

ポスター配布や物品販売などのボランティアで市美術館を支援する市美術館協力会。300人を超えていた登録者数は09年度206人まで減った。解説ボランティアの主婦、木南恵子さん(61)はつぶやいた。

「美術館は誰のものかしら。今は市民に愛される美術館でない気がする」。再生への道はまだ見えない。【立上修】(毎日新聞

 

今回の新潟市美術館さん問題を、私なりにある会社にたとえて書いてみたいと思います(すべてフィクション?です)。

 

「ある地方都市にある、そこそこ老舗の食品会社。近年は新機軸に乏しく、株価は低迷中でした。そこで、あらたな大株主さんが社長を更迭。敏腕新社長を迎え、経営の刷新を図ります。新社長は体制を一新、売れない旧商品を切り捨て、ぞくぞく新商品を投入しました。飛ばされた旧社長や従業員たち、さらに旧商品を愛していた顧客はおもしろくありません。衛生管理上のアラを暴露。大株主や新社長の問題を追求します。新社長は更迭され、計画していた新商品発売は頓挫しました・・・」

 

近年の会社では日常茶飯事的な騒動ですね。ここから凡庸な「会社とは誰のものか」「会社とは誰のためにあるのか」という問いが導きだされます。

 

「社会」「株主」「従業員」「顧客」など、いろいろな答えがあるでしょう。が、それぞれが複雑な利害関係を持ち合わせているので、正解は「ない」と言ってもよい。従業員に愛される会社が、必ずしも多くの顧客の満足をえず、結果として株主に利益をもたらさない、などということはよくあります。CSRなど社会貢献のため、従業員の給料を下げる株主もいるでしょう。

 

会社と(公立)美術館が異なるのは、株主(首長や議員)が(地域限定の)顧客による選挙によって選ばれる存在か否か、ということでしょうか。あとは同じです。

 

今回の問題は、公立美術館であればどこでも起こりうる構造的な問題です。というより、「日本の公立美術館は、すべてこうした構造的問題を潜在的に抱えている」というべきでしょう。

 

ちょっと飛躍しますが、私は日本の美術館業界が、こうした問題を抱える「公立」美術館に偏重、依存しすぎていることこそが、最大の問題だと考えています。

posted by baikado at 11:26| Comment(0) | 新潟市美術館問題