2010年03月18日

前代未聞です

新潟市美術館:仏像展会場、長岡に変更へ 新潟市長「市民に申し訳ない」 /新潟

 

◇対応、混迷の度深め

国宝などの仏像展示が危ぶまれている企画展「奈良の古寺と仏像」(4月24日〜6月13日)は、新潟市美術館での開催を見送り、長岡市にある県立近代美術館への会場変更を模索することになった。市民の間では署名活動も始まった仏像展だが、ぬぐえぬ文化庁からの不信感、北川フラム館長の更迭前倒しと篠田昭市長自らの館長兼務、急な会場変更と、市の対応は混迷の度を深めている。

開催場所の変更方針は、16日開かれた同展の実行委員会で了承された。12日以降、文化庁に計画通りの開催を求め、市美術館の管理体制などについて協議してきたが、同庁から了解を得るにはなお時間がかかると判断した。

市美術館にこだわるより、会場を変更して同展そのものの開催を優先させることにした。会場は分散させず、国宝と重要文化財の仏像15点以外の作品も含め全46点を近代美術館で展示する方針という。

市外での開催について篠田市長は「新潟市民には申し訳ないが、何とか県内開催の道を探り、県民の期待に応えたい」とし、自身の責任については「今は近代美術館での開催に全力を尽くすことだ」と述べた。

近代美術館は仏像展の予定期間中も展示会を予定。このため、仏像展が予定通りの日程で開催できるかは、今後の調整が必要となる。篠田市長は「4月24日開幕は変えずに済みそうだが、(仏像展の日程が)完ぺきには予定通りにいかないようだ」と明かした。県教委文化行政課は「正式に決まれば、最大限の協力をしたい」と前向きな姿勢を見せている。【小川直樹】(毎日新聞

 

すごいですね・・・。こんなことが行政上可能なんですね。

 

同仏像展は当然「新潟市」さんの予算で開催するはずでしたのでしょう。それを長岡市の県立近代美術館さんで急遽開催するとは・・・。

 

新潟市さんの予算で県の施設で展覧会をする、ということです。県の施設が同じ市内にあるのであれば、考えられないことはありませんが、50kmも離れた他市で行なうなんて・・・。

 

新潟市議会や市民は何も言わないのでしょうか。それよりも同展開催のほうが優先するということなのでしょうか。

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2010年03月09日

更迭!

北川フラム館長を更迭

新潟市、作品のカビ・虫問題で

 

新潟市美術館の企画展の作品からカビや虫が発生した問題で、同市が市美術館館長の北川フラム氏を更迭することが8日、明らかになった。北川氏は今月末で館長の任期が切れるが、市は契約を更新しない。

市美術館では昨年7月、「水と土の芸術祭」の土状の展示作品からカビが発生。現在開催中の「新潟への旅」展でも展示中の電動カートからクモや虫が発生するトラブルがあった。

館長の後任は常勤館長とし、市職員を登用する方針だ。

市美術館では4月に国宝や重要文化財を展示する「奈良の古寺と仏像」新潟展開催を予定。篠田昭市長は「新年度の最大の事業である仏像展に向け万全を期すため、館長は常勤体制が望ましいと判断した。2回にわたって市民に不安を与えてしまったことについて私の任命責任はある」と説明。館長を更迭することで、仏像展を開催するための信頼を回復したい考えを示した。

北川氏は上越市出身で、十日町市などで開かれている「大地の芸術祭」の総合ディレクター。2007年4月に新潟市美術館の非常勤の館長に就任、美術企画監を務めた。昨年の「水と土の芸術祭」ではディレクターだった。

また今回の問題で、文化庁の担当者は8日、国宝などの展示について強い懸念を美術館側に伝達した。事態を重視した市は9日開く同展の実行委員会で報告し、対応を協議する。

新潟日報2010年3月9日

 

公立美術館(博物館)の館長が、こうした理由で更迭されるのは前代未聞でしょう。

 

市長さんは「市民に不安を与えてしまった」と述べておられますが、こんなことに不安を感じる市民とはいったいどのような市民なのか。

 

むしろ、カビや虫を発生させてしまった作品、すなわちその作家たちにまず謝るべきなのではないでしょうか。作家たちは必ずしも美術館向けの作品を制作するわけではありません。そうした美術館向けではない作品を展示する場合、その管理への配慮は基本的に美術館側にあるはずです。

 

今回の一連の報道からは、そうした作家さんたちへの配慮がまったく感じられません。むしろ、彼らの作品が「(美術館にとって)問題ある作品」と決めつけているかのようです。

 

展示室から追い出され玄関外に移されてしまった、虫が発生したとされる作品の作家さんはいきどおりを感じないのでしょうか。

 

結果として新潟市美術館さんにまつわるさまざまな問題?に巻き込まれてしまった作品や作家さんたちに、同情の念を禁じえません。

posted by baikado at 11:18| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2010年03月06日

クモ大発生?

新潟市美術館:また失態 かびの次は…虫 展示作品からクモ大発生

 

 展示作品にかびが発生した新潟市美術館(北川フラム館長)で、今度は企画展示室の1室でクモや甲虫類の昆虫などが約40匹確認されていたことが、関係者の話で分かった。美術専門家は「虫は所蔵品の天敵」と指摘。相次ぐ問題発覚に同館の管理レベルを疑問視する声もある。同館は今春、中宮寺や法隆寺が所蔵する国宝や重要文化財の仏像の展示を予定している。【立上修】

複数の関係者や目撃者によると、確認されたのはクモや小さな甲虫など。いずれも館内の「企画展示室3」で見つかった。

大関洋一副館長の説明によると、クモは2月20日、開催中の企画展「新潟への旅」で同室に展示した「エコ電動カート」から発生した。このため、同室内の展示作品をブルーシートで覆い、市販のくん煙殺虫剤をたいた。しかしクモの発生は収まらず、ソーラーパネルを取り付けたボックスの配線から卵も見つかり、25日夜に屋外展示に切り替えたという。

大関副館長は「クモは文化財害虫ではない。ほかの虫については調査中だが、あってはならないこと。環境対策を徹底したい」と話している。

同館では09年7月、「企画展示室1」と「企画展示室2」で制作された土塀状の作品などにかびが発生。10月5日から12日間、かびが発生した展示室の空調機を消毒、天井や壁面などのふき取りとカーペットのクリーニングをしていた。しかし元府中市美術館長の本江邦夫多摩美術大教授は「虫は移動するので、発生したとすれば館内全体を薫蒸して清める必要がある」と指摘。館内を密閉し、ガスによる殺菌・殺虫が必要で1週間以上かかるという。

新潟市美術館は4月24日から中宮寺の国宝「菩薩半跏像(ぼさつはんか )」など国指定の仏像計14点を展示する企画展「奈良の古寺と仏像」を開催予定(菩薩半跏像は5月25日から展示)。

 (毎日新聞)

 

以前にもブログでちょっとふれた新潟市美術館さん問題。まだ尾を引いているのですね・・・。

 

こうしたもめ事?を見聞きするたび、「美術館」とは何なんだろう? といつも考えます。

一般論では、「美術館」とは、美術資料を中心とする「博物館」の一種です。

 

今回の事件は、新潟市美術館さんを純然たる「博物館」として考えた場合の問題点でしょう。つまり、博物館としての資料の保存管理機能に問題がある、という批判です。

 

新潟市美術館さんを批判されている方々は、そこに批判を集中されているようですが、いわゆる正統な博物館レヴェルの保存管理機能を、国内のどれだけの美術館が実現しているのか。

「ウチの展示室にはクモ一匹いません!」と胸のはれる美術館さん、いらっしゃいますか(虫がいてもかまわない、と言っているわけではありません)?

燻蒸剤には残効性(効果が続くこと)がないので、燻蒸の翌日にでも虫は侵入可能です。

 

また、新潟市美術館さんの、その他の展示や教育普及機能などについての評価はどうなのでしょうか。

 

美術館にかぎらず、あらゆる施設はその総合的なパフォーマンスで評価されるべきでしょう。

posted by baikado at 09:35| Comment(0) | 新潟市美術館問題

2009年09月17日

チェンジ

S館長から招待券が送られてきました。いつもありがとうございます。

 

その中に「《新潟市美術館を考える会》設立のお知らせとレポートの送付について」という資料が同封されていました。これはこのレポートについてブログで何か書け、というお達しかと思いましたので、感想を少し述べてみたいと思います(同美術館に関心のない方は本ブログは読み飛ばして下さい)。

 

なお、同レポートなどは同会のHPに全文が掲載されていますので、まずそちらからお読み下さい。

 

一読して、以前のブログで同美術館のカビ問題についてふれ、「カビ問題だけではなく、イヴェント全体に対する批判が込められている、と見るのは深読みしすぎでしょうか」と述べた、「深読み」が当たっていたことが分かりました。

 

同レポートは、同美術館の現館長、北川フラムさんへの個人攻撃です。同会の意見だけで、北川さん側の反論?などは何もありませんので、双方の意見を客観的に比較することはできません。あくまで個人的意見を述べます。

 

元同業者として言わせていただくと、同美術館にはもともとパッとしない日本海側の美術館の中でも、とりわけ影の薄い印象しかありません。近年、同市内に新潟県立万代島美術館が開館したこともあり、失礼ですが古いタイプの「巡回展と貸館中心」の美術館として、忘れ去られた印象すらありました。

 

それが2007年に北川フラムさんを館長に迎え(北川さんは新潟県ご出身らしいですね)、「水と土の芸術祭2009」など大規模なイヴェントを開催するなど、だいぶ変わったな、と思っていたところです。

 

私は北川さんが企画された(される)さまざまなイヴェントなどには、基本的に批判的な立場です。しかしながら、こと最近流行?の美術館評価という観点から見れば、北川さん以前の同美術館より、はるかに活性化したように見えることは事実と言わざるをえません。

 

日本の公立美術館は、しょせん自治体の一出先機関に過ぎません。首長により館長の人事が裁量されることは当然です。また、新館長の意向に添わぬ学芸員が異動や退職させられることも、国外の美術館では珍しくありません。

 

昨今のポピュリズム吹き荒れる状況下、公立美術館もその影響から免れることはできないのです。

 

posted by baikado at 16:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 新潟市美術館問題

2009年08月01日

カビ

うーん・・・。毎日新聞さんの記事はちょっとニュアンスが異なりますねえ。

 

新潟市美術館:展示作品ジメジメ、カビ発生?夜間空調せず

2009年7月31日 15時0分 更新:7月31日 15時0分

 

自然豊かな新潟の魅力を発信する「水と土の芸術祭」の一環で、新潟市美術館(同市中央区、北川フラム館長)に展示中の土製作品にカビが発生している可能性が高いことが分かった。美術専門家は「水分を含んだ作品を美術館内に持ち込むのは非常識」と指摘。館内で制作された巨大な作品だけに運び出すのも難しく、新潟市などでつくる実行委員会と作家らは31日、対応を協議している。【黒田阿紗子、岸桂子】

 

芸術祭は今月18日から開催。12月27日までの期間中、13カ国のアーティストが制作した計71作品が市内各地に展示されている。

問題になっているのは、左官職人でもある久住有生(なおき)さんの作品「土の一瞬」。わらを混ぜた土を塗った高さ2メートル、幅9メートル、厚さ60センチの土壁状だ。今月16日に完成し、乾燥して土がひび割れていく過程も見どころという。

22日に同館職員が表面に白いカビのようなものを発見。翌日には最大で直径9ミリのものが20カ所以上確認された。職員が取り除いたが、その後も湿った部分や隣室の他の土製作品でも見つかった。展示室は、日中は湿度55%に保たれている。しかし、空調を止めていた夜間は、梅雨の影響もあって約80%まで上がっていたという。

作品設置に立ち会った職員は「水気のある作品なのでカビが生える可能性は予測できた。だが、夜間は空調を調節する要員を確保できず、外気を取り入れて換気する方法を取った」と説明。23日以降は24時間体制で空調を稼働させている。

同館はパブロ・ピカソなどの作品も展示。実行委は来館者が増える週末を前に、問題の作品を撤去するか、カバーで覆うなどの対応策を話し合う。

 

◇常識で考えられぬ

元府中市美術館長の本江邦夫・多摩美術大教授の話 作品を直接見ていないが、水気のある作品を展示すること自体、常識では考えられない。特に土はカビや雑菌が発生する可能性があり危険。他の作品に雑菌が付いて腐敗につながりかねない。可能な限り現状保存するのが美術館の使命で、その根幹を揺るがす問題だ(毎日新聞)。

 
「問題の作品を撤去するか、カバーで覆う」、つまりこの土製作品」は実質的に「なし」になるということですね。問題は、作品にカビが生えたことではなく、このような報道がなされたことにあるような気がします。
 
「水と土の芸術祭」って、「越後妻有アートトリエンナーレ」のことかと思っていましたら、まったく違うイヴェントなのですね。ほとんど同じ時期に、お隣同士の町で、同じプロデューサーによって、このような大規模なアートイヴェントが開催されるのは珍しいです。というか異例です。
 
こうしたアートイヴェントには賛否両論がつきものです。個人的には「否」派です。このようなアートイヴェントは、アート(芸術)が、「(世の中の)役に立つ」という大前提に立っているからです。そうでなければ、「町おこし」や「観光振興」などの目的で、行政がお金をつぎこむはずがありません。その大前提がうさん臭いと感じるためです。
 
まあ見てもいないイヴェントについてあれこれ書くのはやめておきますが、本江さんのこのコメントはちょっと???ですね。現代美術は何でもアリです。水気どころか、展示室に池を作ったり川を流したりもします。本江さんもそんなことは先刻ご承知のはず。それなのに「常識では考えられない」とは手厳しい。「他の作品に雑菌が付いて腐敗」「美術館の使命の根幹を揺るがす」もちょっと大げさじゃないですかね。雑菌やカビの胞子なんて世界中に飛んでますよ・・・。
 
カビ問題だけではなく、イヴェント全体に対する批判が込められている、と見るのは深読みしすぎでしょうか。
 
・・・
 
昨夕、梅香堂に名古屋芸術大学のTさんがお見えになりました。芸術批評誌『リア』の取材のためです。Tさんと私は同い年なので、芸術そっちのけで、老後?などプライヴェートな話題で盛り上がってしまいました。暑い中、あまり役に立たない話ばかりですみませんでした。その上晩ご飯までごちそうになって・・・遠路はるばるありがとうございました。
posted by baikado at 15:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 新潟市美術館問題