2013年11月14日

「再発見!大阪の至宝」@大阪市立美術館

先日、ちょっと時間ができたので、天王寺へ。大阪市立美術館さんの「再発見!大阪の至宝 コレクターたちが愛したたからもの」です。

大阪市美さんをはじめ、大阪市の博物館・美術館さんのコレクションの中核を占めるおもに個人コレクターさんたちが寄贈した作品や資料が展示されています。ほとんどがすでに見た名品ばかりでしたが、こうして「〜コレクション」とセクション別けされているのを見ると、それぞれのコレクターさんの個性が見えてくるようで興味深い。

会場で思ったのは、ここにある作品のほとんどは、いわゆる「展覧会」のようなかたちで、広く人の眼にふれることを考えて作られていないこと。当たり前ですが、日本の場合、作者が広く一般の眼を意識して作品を制作しはじめたのは、江戸期の大衆芸術を除けば明治以降です。

「展覧会」や「展示会」が支配的な発表のスタイルになったのは、戦後以降といってもよい。ほとんどの作家が「展覧会」を意識してはいなかった。彼らが意識したのは、いわゆるパトロンやコレクターであって、不特定多数ではない。

それが表現などに与えた影響は、いろんな先学が指摘していますが、私が今回直感的に思ったのは、「作品が恥ずかしそう」に見えたことです。ピカピカの展示ケースに収められ、四方八方からながめられている姿は、どこか所在無さげでした。

長い間、個人コレクションであった作品には、そうしたことを感じさせる「何か」があるのかも知れません。

とにかく、これだけの個人コレクションによって成立している公立美術館さんは、ほかの自治体には少ない。ぜひ足を運んでみて下さい。12/8まで。

posted by baikado at 17:33| Comment(0) | 博物館・美術館

2013年11月03日

御礼:梅香堂オープン四周年

本日、文化の日は梅香堂のオープン記念日です。ついに四周年を迎えることができました。
四年間においでいただきました、多くのお客さまに心より御礼申し上げます。

また、展覧会やイヴェントなどに参加いただいた作家や関係者のみなさん、多くの友人知人に、深く感謝申し上げます。
2009年の11月にオープンした時以来、「最低三年は続ける」ことを目標としてきましたが、おかげさまでそれは果たすことができました。

もちろん順風満帆というわけにはいかず、課題が山積している中での四年目の記念日ですが、素直に喜びたいと思います。

四周年記念展として、来たる11月16日より、下道基行君の「torii」を開催予定です。下道君の梅香堂での展覧会は、2009年の12月以来。どうぞご期待下さい。

最後に、物心両面で私を支え続けてくれた家族に、感謝の意を表させていただきます。ありがとうございました・・・。
posted by baikado at 17:53| Comment(0) | 梅香堂

2013年10月27日

花代 写真展「灰色区域」終了

ただいまを持ちまして、花代 写真展「灰色区域」は無事終了いたしました。お忙しいところおいでいただきました多くのみなさまに、花代さんともども御礼申し上げます。

誠にありがとうございました。

今回は花代さんにとってはじめてのモノクローム作品展であり、いらっしゃったお客さんも、新鮮な印象を受けられたようです。花代さんの作品が好きな方、写真一般が好きな方、多くの方々がいらっしゃいましたが、おおむね好評でした。とくに写真を専門にやってらっしゃる方から少なからぬお褒めの言葉をいただきました。

ご存知のように写真は、技術的な部分も大きく、とくに今回のようなアナログのモノクローム・プリントではその要素が強くなります。

しかし、花代さんの作品はそうした部分を意識させず(もちろん技術的に問題がある訳ではありません)、個性的な花代さんの世界、空間を表現できていたと思います。

そしてカラー作品とはまた異なった静謐さや深みのようなものが感じられ、花代さんの新しい側面が垣間みれた気がします。

花代さん、お疲れさまでした・・・ありがとう。

posted by baikado at 19:00| Comment(0) | 梅香堂

2013年10月22日

梅田哲也「山が入る穴」@のせでんアートライン

はじめて、妙見山に行ってきました。 能勢電鉄開業100周年記念「のせでんアートライン妙見の森2013」に、梅田哲也君が出品しているためです。

展示を手伝ったPOSの大川君よりちょっと話は聞いていましたが、作品は山頂近く、辺鄙な三角点のそばにありました。廃屋となった茶室を改造したものですが、なかなか大変な工事だったことがうかがえます。

場所が場所なだけに、作品には電気が使われていません。ネタばれになるので多くは語りませんが、二重の意味でまさしく「山が入る穴」です。

そして、梅田君がのせでんアートラインの中で最も不便なこの場所をなぜ選んだのか、伝わってきます。この作品はドカドカと多くの観客が押しかけるものではなく、せいぜい二、三名、しかも作品の鑑賞にはかなりの時間が必要だからです。まわりの幽かな松籟や、鳥や虫の声も大事でしょう。

都会の喧騒を離れ、霊山の山頂で瞑想できる・・・というとちょっと大げさですが、梅田君らしいサイト・スペシフィックな良作です。

山頂に登るためのケーブルカーとリフトの路線の途中にも梅田君の作品があるようです(ケーブルカー路線作品は未見)。電車で行くか、車ならケーブルカーの始発、黒川駅に駐車して登るとよいと思います。「アート&グルメパス(1,000円)」がおすすめか。

また山道だからだけではなく、梅田君の作品をよく見るためにも、晴れの日に行かれることを強くおすすめします(11/24まで)。

posted by baikado at 20:55| Comment(0) | 美術

2013年10月21日

「映画をめぐる美術―マルセル・ブロータースから始める」@京都国立近代美術館

タイトルからちょっと難解なイメージのあった展覧会ですが、図らずもエレベータを利用したため、展示順路の出口から見たことにより、この展覧会がすんなりと理解できた気がします。

本展は、「マルセル・ブロータースから始める」としつつ、本当は「映画と美術」という壮大なテーマを扱う野心的なものであり、そのテーマが拡散してしまうことを避ける─言い方は悪いですが、恣意的に切り取ったことのいわば「言い訳─担保」として、ブロータースがその筆頭にあるのではないでしょうか。

展覧会は、「Still / Moving」「音声と字幕」「アーカイヴ」「参照・引用」「映画のある場」の五つのサブテーマで構成されているらしいのですが、これは考えてみればどのような作品にも当てはめられそうなテーマです。

こうしたテーマ展の成り立ちには、テーマから演繹的に作家や作品を選ぶ場合と、作家や作品からテーマを導く帰納的な場合があります。本展は一見演繹的に見えながら、実はブロータスだけではなく、すべての作品からはじまる帰納的な展覧会─同時多発的な物語といえるかも知れません。

ひさびさの京近美さんらしい?マニアックな展覧会としておすすめします。欲をいえば、映画と美術を切り分けるものについて、もう少し掘り下げて欲しかった・・・10/27まで。

posted by baikado at 00:19| Comment(0) | 博物館・美術館